その日は、朝から出張でした。
商談が終わり、気が付くと・・・
部下から尋常じゃない着信履歴が入っていました。
折り返すと、
「次郎三郎さん、やばいっす。。
午前中、緊急の全体の朝礼があって社長が亡くなったみたいです。
しかも今月分の給料もでないみたいっす。。」
一体、何をいっているかすぐに理解はできませんでした。
社長が死んで、給料が出ない!?
とにかく、はやく帰ってこい、と●●さん(上司)から伝言とのこと。
「わかった。」
戻ったとたん、
管理職全員が副社長に呼び出されました。
これもまた、随分とやつれた副社長とその横には、
【見覚えのない男性】がいました。
一目見て、体から放っているオーラが・・・
こっちの世界の人ではないというほど強烈なインパクト。
目を合わせてはいけない、そんな気がしました。
「こちらは、社長の知り合いのO社長です。
生前、社長が大変お世話になっていた人です。」
「??」
その時は、なぜこんな大事な時に、
【部外者がいるのか?】理解ができませんでした
この異様な雰囲気の中で、
まず社長が昨夜、亡くなったことが知らされました。
急なことで、周りはかなり動揺していました。
自分も、もちろん動揺していましたが、
3日前のことを思いだし別人のようになった社長を見て、
急死したことも、、なんとなく理解することができたような気がしていました。
給与遅配については、社長が亡くなったことで、
会社名義の口座はすぐに凍結されたためとのことでした。
ただ単純に死亡したからという理由だけでなく、
銀行側が会社に貸し付けている金の回収の見込みが薄くなる、
という判断を下したとの噂もありました。
副社長からは、一時的に給与遅配が起こるが、
もちろん、ちゃんと給与は支払うという説明でしたが、
いつ振り込まれるのかという質問には、明確な回答もありませんでした。
それから、いろいろな疑問が副社長に投げかけられました。
- 社長が何の病気で急死したのか?
- 次期社長はどうなるのか?
- 会社はどうなるのか?
事業はもちろん継続するという説明はあるものの
副社長からの説明はそれ以上、何もありませんでした。
・・・というよりも、横にいる「O社長」という男を気にかけながら話しており、
言葉を慎重に選びながら、話しているという印象でした。
そのO社長も何か言うでもなく、
終始ひと言も言葉を発することもない。
その佇まいは、副社長が余計なことを言わないように、
監視でもしているかのような感じでした。
そこに座っているだけで、かなりの圧迫感でした。。
会議は重苦しい雰囲気の中、
昨日まで働いていた会社とは思えないような、
究極に陰鬱とした感じとなって・・・
ついには管理職の中に急に泣き出す者も出現、
事態はより深刻になっていく様相を呈していました。
恥ずかしながら、このような深刻な事態になってから、
初めて会社が傾いていることを認識し、大きな危機感を抱きました。
振り返ると、次々と役員が辞めていったことも・・・
こうなることがわかっていたのでしょう。
会社は、多方面から相当な額を借り入れしており、
それを上場して、返済もしくはさらなる融資をと計画していたのでしょう。
上場ができなかったことで、それも泡と消え、
利益を享受しようと考えていた債権者達は、たちまち手のひらを返すように
冷酷な態度をとりはじめていたのだと思います。
会社は本当に窮地に追い込まれていたのです。