緊急会議の後、
営業と制作の管理職だけが残ることを告げられました。
ひとつは、クライアントから入金される会社の指定口座を、
別の指定口座に振り込ませること。
もうひとつは、
東京で行われる通夜と葬式に参列することを言い渡されました。
翌日、通夜と葬式に参列するため、
営業の管理者4名と、創業時からいる古株のS部長と東京へ向いました。
通夜の会場に到着すると、
現場は異様な空気に包まれていました。
明らかにその筋の人たちが大挙していたのです。
その中には、副社長の隣にいたあのO社長もいました。
そしてどうもこのO社長が親族ともめたらしく、
社長の実の姉夫婦が参列をしないということになったようでした。
後でわかったことですが、社長がそういった筋とも関係があって、
多額の借金をしており、その者たちが債権を取り戻そうとしていたようでした。
通夜が終わり、S部長だけが親族に用があるといって、
その場に残り、残りのメンバーでホテルに戻った僕らは、
S部長と同部屋だった者の部屋に集まり、
- 今日、起きたことをどこまで現場のみんなに知らせればよいのか
- 副社長や残った役員にどう説明してもらおうか
など、S部長を待ちつつ、
アルコールを飲みながら話していました。
そうこうしているうちに、明け方の4時になり、
S部長が戻ってきました。
ようやく戻ってきたS部長に、
「S部長、お疲れさまです。」
となげかけた瞬間・・・
S部長の姿を見て愕然としました、、
礼服やカッターシャツは、びりびりにやぶかれ、顔は腫れており、
首や手にも傷ができていて、明らかに暴行されたような様子でした。
話を聞くと、O社長やその連中に捕まり、
飯を食べにいったときに、言い合いになったらしく、
暴行を受けたようでした、、
「S部長、ほんまにお疲れさまですね!」
などと、言う者もいましたが、
誰ひとり、笑っていませんでした。
翌日、葬儀があり、予定どおり出席しましたが、
火葬場にはいかず、S部長だけがバスに乗り込みました。
僕らは、S部長にも手を合わせてバスを見送り、
大阪へすぐに戻りました。
新幹線で大阪へ戻っている途中、
すでに自分の中で、
【会社辞める】
という決断をしていました。